心の上に刃をのせて生きてゆく

先日深夜のテレビで横綱大鵬を偲ぶ番組があり、ついつい引きずりこまれるように最後まで見てしまった。幼少の頃母親とともにカラフトから引き揚げ北海道で納豆売りや林業の仕事をやったこと、20キロの雪道を歩いて学校に通ったこと等を回想しながら、彼が生前「子供のころを思えば大相撲の世界に入って一度も苦しいと思ったことはなかった」と語っていた。そして、揮毫を頼まれれば好んで色紙に「忍」の一文字を書いた。忍という字は心の上に刃をのせて生きていくという己に厳しい彼の生きざまが凝縮されているからだという。

昨日まで一泊泊まりで、荒井敦子さんの音楽の森ファミリーコーラスの一員として十津川村復興支援コンサートに参加した。バスの中から一年半前の災害の爪痕を見ながら行って改めて当時のニュースを思い出した。厳しい自然環境のなかでふるさと十津川を守るために必死で取り組む更谷村長をはじめとする役場の皆さんの気迫が伝わってきたし、村人の温かさを感じることができた。お米を作る広い田んぼがなくて、二反(約1800ヘーベ)作るのに48箇所の小さな田んぼが必要なのだと言っていた村人

役場のホールで村の人たちをはげまそうと歌ったわたくしたち

の言葉が印象的だった。更谷村長は「まだ行方不明者がまだ6人もいる。この人たちを見つけるまでは復旧・復興が完結したとはいえない。だけど、今回の災害が起こったことで十津川村民の心が一つになったことはありがたいです」とおっしゃったことが胸に響いた。十津川でも「心の上に刃をのせて生きてゆく」気持ちが伝わってきた。