老舗麩商 玉置半兵衛さんの話

  昨日は久しぶりに素晴らしい話を聴くことが出来た。堀井良殷さんにお誘いを受けて入れていただいた石田梅岩の思想を学ぶ会で、京都の麩商、株式会社半兵衛麩の第11代目当主、玉置半兵衛さんの講演だった。80歳間近ながら京都弁で流暢に1時間半、3百年以上守られてきた伝統と家訓(小さいときおじいさんやお父さんから教わった生き方や商人哲学)をわかりやすく話してくださった。ご著書「あんなあ よおうききや」がベストセラーだという。代々子供や孫に口移しで伝えてこられたその力に驚きながら聴き入った。

 いっぱいいい話を聴いたが、中でも印象深いのが「私が小さいときおじいさんがあられのお菓子をだしてくれた。このとき『形の綺麗なものから食べたらアカン、割れてるのから先にお食べ』と言われたが、どういう意味かわからなかった。おじいさんが亡くなって中学生の頃お父さんにその話をしたら『嫌なものから早く片付けなさいということや。夏休みの宿題でも早く片付けたら気持ちがスーッとしていい気分で遊ぶことが出来るやろ。嫌なことは早く済ませとくことや。ある銀行でお金を借りに来た人にお茶とソラマメをお菓子代わりに出したそうな。ソラマメにも欠けたもの、割れたのや形の悪いのと良いのがある、お客さんがどれから先に食べはるか見てカネを貸す貸さないを決めたという。嫌な借金をサッサと返していく人は信用できるということや。」とか、うんこの話もあった。

 「死んだらお葬式してもらえるのは人間だけや。人間の命も魚や鶏の命も一緒やのにありがたいことやと思わないか。便所は人間がいろいろな動植物の命をいただいて生かしてもろてるその生き物の葬式の場所や。きたないなんていうたらアカン。昨日食べたものが出てくる、おかげさんでありがとうと手を合わせて便所から出てくるんやで。便所はいつもきれいにしておくもんや。便所を見たら、そこの家の人がわかるといわれるやろ。」この話を聴いて私は正直唸った。トイレ掃除をして『掃除に学ぶ会』で学ぶことは多いがここまでの気持ちになるのは凄い。

 もう一つ、「子孫のために財を残すは下、事業を残すは中、人を育てるのは上、されど財無くば事業続かず、事業なかずんば人育たず」という話もあった。まさにこの方のお家は家庭教育の鑑みたい、いつか京都でこの方のお店で麩を買って来よう。