森岡正宏の歯ぎしり

いま日本の政治は「ねじれ」の中で停滞が続いている。政策よりも政局が優先し、国家・国民よりも党利党略が幅をきかせている。期待に応えていないことに、多くの国民は苛立ち失望している。

機能不全の国会

今国会は別称「ガソリン国会」、最大のテーマが道路財源である。特別むずかしい哲学を要することもなくカネで済む話なのに与野党妥協点を見出すこともできない。中国製冷凍ギョーザの殺虫剤混入事件、イージス艦の衝突事故、世界同時株安・円高など次々にいろんな出来事が襲いかかってくるのにトップリーダー福田康夫の顔がほとんど見えてこない。日銀総裁の人事ももたついた。野党も野党だ。政府与党を困らせ早く衆議院を解散に追い込むことしか頭にないように見える。果たして国会議員は日本経済の実態が相当ひどい状態であることを認識しているのだろうか。

 

ンドン下がりつつある日本の地位

そんな国内の動きをよそに、世界における日本の地位はドンドンさがってきている。日本経済が世界の生産に占める割合はピーク時の16%から10%を割るところまできた。一人当たりの国民所得もかつて一位であったのに、いまや十八位にまで落ち込んでいる。さらに、日本を取り巻く環境の変化は著しい。中国・インドなどの経済発展はめざましく特に中国は軍事力も20年続けて二桁台の伸びを記録し台湾・日本などには大きな脅威となっている。アメリカ・ロシア・韓国・台湾などの指導者が代わりつつあるなかで日本の外交・防衛政策をどのように進めていくべきか、極めて重要なときを迎えている。国会が機能不全の状態であることは許されない。

 

危ない国、中国  それでも言うべきことを言わない日本

それにしても、中国は危険な国だ。8月に北京オリンピックが開催されるというのに、冷凍ギョーザの事件は中国の食料品は危ないということを世界にメッセージしたようなものだ。日本人が延べ9百人も中毒症状で病院に駆け込んでいる事実があり、日本の警察の調査で明らかに中国国内で混入されたものであろうと思われるのに日本政府は中国に対して何も言わないのもおかしな話だ。アメリカはオリンピック開催中選手団等6百人の食糧を毎日空輸することを表明している。日本も「中国の食品は安全だと言えないから輸入をストップすることを検討したい。」くらいのことを言ったらどうだ。

チベット自治区の暴動も、共産党一党独裁、漢民族優位の中国にあって少数民族であるチベット人が如何に迫害されているかを推測させる重大な事件である。中国国営放送の報道と他から流れてくるニュースとは全く違う。中国はダライ・ラマ14世の扇動による暴動だと決め付けているようだが実態はそうではない。東トルキスタン、モンゴル人などとともに少数民族であるチベットの人たちも、中国共産党軍によって独立を奪われ侵略・虐殺の被害者としての歴史をたどってきたのだ。人権、環境などの視点から中国をみるととてもオリンピックを開けるような国ではない。

尖閣諸島の領有権、東シナ海のガス田開発、総理の靖国神社参拝などの問題における中国の姿勢を見ていると、日中友好が大切だとニコニコ笑ってばかりではおれない。中国政府に「言うべきことを言う」、日本の外交に足りないのがこれだ。

医療の崩壊にストップ

 医療の崩壊が心配だ。産婦人科医・小児科医が足りない、看護師が足りない、借金で苦しんでいる病院が多い。しかも医療も都会と地方の格差が深刻になっている。いいお医者さんが都会に集まり、田舎では難しい病気に罹ると診てくれるお医者さんがいないし、子供を産むこともできない。日本の医療費は年間約30兆円、パチンコの売上高とほぼ同じである。主要先進国のなかでは国内総生産に占める医療費の割合が最も低い。アメリカの医療費200兆円という規模はあまりにも大きすぎるが日本の医療費は毎年毎年押さえ込みすぎてはいないか。医師・看護師の増員をはかるべきだし田舎に重点配置してほしい。世界一の長寿国となった背景にはこれまでの医療の貢献も大きいに違いない。しかし今、社会保険診療報酬制度を含め医療の仕組みを点検すべきだろう。アメリカの口車にのって株式会社の病院をつくるようなことをしてはならない。さらに医療の格差を広げてゆくことになる。年金・介護・医療を一体ととらえ安心して老後を迎えることができる、安心して子供を産み育てることができる社会にしなければならない。少子化対策として出産費用くらいは国が全額負担するという思い切った決断をすべきだ。

平成20年3月18日 記

森岡正宏