働き方改革の難しさ


 安倍政権の政策の目玉とされている「働き方改革」に異論を唱えるつもりはない。がしかし、とても難しい問題だということが本当にわかっているのかな、どう改革をするのかなと心配になってくる。
1つは、「同一労働同一賃金」だ。小泉改革の一環で非正規雇用者や契約社員が生まれ、特にサービス業を中心として定着してしまった。非正規雇用者無しではこの厳しい競争社会で生き残ってゆけない。コストダウン競争にさらされ、雇用問題がデフレ現象を生む一つの要因になった。今更非正規の人と正規の人を同一賃金にしろと言われても後戻りできないのではないか。初めから非正規を望んでいる人はいいけれど、正規の社員になりたいけどなれない人をどのようにして救っていくのか?種々の保険料負担などを考えると企業経営者はなかなか同意できないのではないか?
 日本型の終身雇用制度や年功序列制度が壊れた結果、多様な働き方が生まれ、グローバル社会で生き残っていくためには良い面もあるが、格差を生む一つの要因につながっているともいえる。特に一人親家庭(特に母子家庭)の多くは非正規の人が多く子供たちがつらい状態に置かれ高等教育も受けられない。
 2つには、電通社員の自殺で問題になっている残業時間だ。死を選ばねばならないほど働かせるのはもちろんいけないことだが、その人の仕事の性質や置かれている環境によってはめちゃくちゃ忙しくて残業せざるを得ない場合もあるし、アメリカなどでも責任ある立場の人は驚くほどよく働いている。
 私は政治の世界に長くいたので、その経験から言わせてもらうと、政府の周辺は翌日の国会答弁資料作成のため役人は毎日「午前様」である。よく働くというより、政治家の質問内容が届くのが遅いからお役人はどうしても遅くまでかかって答弁書類をつくらざるを得ない。閣僚たちが読み上げているのはみんなお役人の残業の結晶である。労働問題を所管している厚生労働省だって関係する課のお役人は午前様の例外ではない。
 今の学校の先生も忙しくて子供と一緒の時間よりパソコンに向かったり雑務をこなす時間の方が長いと聞く。
 私は大臣に代わってロンドンでの労働大臣サミットに出席しスピーチをしたことがある。そのとき、「日本では定年を迎えてももっと働きたいと思っている人が多い。」と言ったら、アメリカやイギリスの大臣が「日本人はなぜそんなに働きたがるのか?欧米では早く仕事を辞めて老後を楽しみたいと思っている人が多いのに。」と問い詰めてきた。その時私は「日本人は働くことを美徳だと考える人が多いというのも一つの理由だと思います。」と答えた。やりたくない仕事を長々とやらされるのは良くないが、働くことの価値を賃金との関係だけで推し量るのは如何なものかと思う。やりがいのある仕事に没頭できることは幸せなことではないか。要は、働く人のモチベーションの問題のように思う。精神状態のよくないとき働くのは面白くないし、つらいだけだ。残業の時間数だけを問題にするのではなく、社員や職員の精神状態を常に良好に保てるよう環境を整えることが必要ではないか。