働き方改革について一言

安倍政権の今の重要施策の一つとして「働き方改革」が議論されている。
 AIだIOTだという時代だから働き方が多様化しているのは当然だし、PCさえあればいつでもどこでも仕事ができる業種もあるから何も会社にいる時間だけで労働を考えるのは世の中の動きに合っていない。
 労働生産性を上げることは大変重要なことだが、残業を罪悪視するあまり働くことそのものを否定する方向、あるいは人生はできるだけ働かないほうが望ましいという勤勉とは程遠い日本にならないかを私は懸念している。
 現職の時、尾辻厚労大臣の代理でロンドンの労働大臣サミットに日本を代表して私が「我が国は60歳の定年を過ぎてもまだ働きたいと思う人がいっぱいいる」という話をしたら、イギリスやアメリカの労働大臣が「日本人はなぜそんなに働きたがるのか?私たちの国では50歳を過ぎると早く仕事を辞めてバカンスを楽しんだり好きなことをしたいと思うのに」と詰め寄ってきた。私はそのとき咄嗟に「日本人は働くことは美徳だと考えている」と答えたことを思い出す。いまも日本人は勤勉さを失ってはいけない。働くことの重要性や働くことの喜びを学校でも教育すべきであり、今の政府の議論を聴いているとその視点が欠けているように思う。
 残業をなくせというあまりそのしわ寄せが大企業では中間管理職にゆき、中小零細企業になると社長や幹部にゆく。それでいいのかという思いとともに、政府の働き方改革の議論の議事録を拝見すると、大企業中心で中小零細企業の実態には触れられていないようだ。
 もう一点、私は声を大にして改善して欲しいと思うことがある。それは社員の単身赴任を無くせということだ。社員であれ公務員であれ単身赴任は健康上も精神衛生上も良くないし、子育てをしている奥さんにとって主人と離れて暮らすことが大きな負担になる。必ず家族と一緒に住むことを条件に人事異動を考えてほしいと思う。