タイガーマスクの正体は素晴らしい

 何年か前に「伊達直人」と名乗る人物が児童擁護私設などにランドセルやノートなどを届けているニュースが何度も流れた時期があり、一つの社会現象となった。どんな人物かと思っていたら最近「タイガーマスク」こと河村正剛というレスラーが名乗り出たことを皆さんもご存知だろう。テレビを観てこの人の発する言葉に胸が熱くなった。
 「子供は虐待されるために生まれてきたんじゃない。抱きしめられるために生まれてきたんだ。子供は泣くために生まれてきたんじゃない。皆を笑顔にするために生まれてきたんだ。」
 何という素晴らしい言葉でしょう。昨今メディアから流れるニュースのなかで、児童虐待やいじめ、子供の自殺がなんと多いことか、昔の日本はこんなではなかったのに、なんでこうなってしまったのかと慨嘆しているのは私だけではないだろう。
 先日、奈良いのちの電話協会の子育て委員会主催の講演会があり、「孤独や苦しみからの叫びー核家族日本一の奈良県」というテーマで県教委の方が話してくださった。
 「県内に働く場所がないから親が県外に働きに出る人が多い。しかも通勤時間が長いから朝早く出て帰りも遅い、家族の会話も少なく子供は一人ぼっち、大人も子供もストレスが溜まり家の中のカウンセリング機能も温かさも無い。ましてや、一人親家庭となると一層深刻だ。家庭も地域も教育力を失っている。
 特に幼児期は五感を育てる大事な時期なのにその機会や場面を親が奪ってしまっている。保育所や幼稚園に預けてさえ置けばいいと思っている親が多い。不登校の原因は学校に原因があるのではなく、家庭内の不和やネグレクト(子育て放棄)にある。
 子供はどういう環境で育ってきたかが一番大事、子供の基本的欲求は4つ、『愛されたい、変身したい、認められたい、くつろぎたい』です。大人も一緒です。無視されることが一番つらい、孤独にさせないことが対策です。」ざっと以上のような話であった。
 私が保護司として関わってきた万引きや傷害事件の対象者は、100%家庭内特に親の不和を抱えている。昔、薬師寺の高田好胤師が「モノで栄えてココロで滅ぶ国にしてはならない」とおっしゃった言葉が頭をよぎる。やっぱり三世代同居の温かい家庭が子育てには一番だ。
 伊達直人も子供のとき精神的にも経済的にも不遇だったようだ。それだけに彼の行為は尊いし重い。