亡父の言葉を思い出した。

 今年は一体どうなってるの?といいたくなるほど、連日猛暑が続いている。そんな中で地球の裏側ではリオ・オリンピックが始まりテレビを観ながら一喜一憂の日々がしばらく続く。
 先祖のお墓の掃除をし、土葬で葬られた父親の墓標に手を合わせた。
 『人生は物やカネを残す人より人を育て人を残す、これが最高の人生だ、教育は良い仕事だ。オマエも学校の先生にならんか?』とひたすら教育者として生きた亡父の言葉を思い出した。父親の言葉に耳を貸さなかった私は中途半端な人生を送っていることが恥ずかしい。
 昨夜私は一人の凄い女性の力に感動した。その人の名は松本真理子さん。マリンバ奏者として、また奈良県の教育委員長を務めた経験を持つ教育者でもある異能の才女である。彼女がマリンバの教室を開いて毎年欠かさず続けてきたお弟子さんたちとの発表会で、大きな節目である50回目の公演が大阪のシンフォニーホールで開かれ、1,500人位の観客がマリンバの魅力を堪能した。彼女がシンフォニーホールでの公演に随分気合を入れて臨んでいることは以前から聞いていたが、80人ほどのお弟子さんが出演され、年齢も小学3年生から82歳までと巾広く皆さん随分頑張っていた。中にはプロとして世界中で活躍している人もいるという。
 これだけ多くのファンを酔わせる姿をみて、50年の間に何百人もの人を育ててきた実績がいま結実しているのだと感動した。亡父の言葉を思い出しながら、松本さんはいい人生を送っているなと思った。昨日は彼女の誕生日でもあったそうで、公演冒頭「私は63歳あたりから歳は数えていない。結婚も妊娠も経験しないで来れたから50回欠かさず続けることが出来た」と笑わせていたが、50回続けてきたことも素晴らしい。
 永い間わたしもお付き合いさせていただき、お兄さんの梅頌さん共々お世話になっている。昨夜は梅頌さんも妹である真理子さんの力に「今まで私は妹の位置から3歩下がって歩いてきたがこれからは5歩下がって歩くことにする」と言って敬服しておられた。
 先日、太安万侶をタイアンマンロと読み、天照大神をテンテルタイジンと読む大学生がいるという話を聞いて驚いた。日本の歴史や神話を殆んど学ぶことなく育ってきた人はこういうことになる。教育の大切さを思い知らされる。