雇用問題が日本社会のひずみを生んでいる

耳慣れない「非正規雇用者」という言葉が出てきたのは多分2000年位,小泉内閣あたりからだったのではないでしょうか?今は派遣労働者もいっぱいいるし、非正規雇用者が全体の4割だというから4半世紀の間に日本の雇用環境は様変わり。生涯一企業や一団体に奉職し給料は年功序列で上がっていくというのが日本型の雇用制度であったがこれではグローバル社会で生きてゆけないと言って,「聖域無き構造改革」の名の元にアメリカに習った。

最近安倍総理は、「同一労働同一賃金」を目標の一つに掲げている。非正規の人も正規労働者と同じ仕事をしているのに処遇が全く違うのがおかしいという声に応えようとしているのだろう。私も大変重要な視点だと思うが、これを実現するのは非常に難しい。どうすればよいのか?例えば飲食業界などのサービス業は競争にさらされながらコストを下げようとするから正社員はごくわずか大半はアルバイターというようなケースが多いと聞く。保険や年金負担を伴わない人を雇い低賃金で使っていたほうが経営者にとってはありがたいだろう。ところが、働いている側にとっては正社員と同じ働きをしているのに報酬が全く違うというのは我慢ならない、当然の話だ。

一人親家庭(母子家庭が多い)の親は子供を抱え非正規雇用者が圧倒的に多い、これが子供の貧困につながっている。また、若くても非正規で働いている人は収入が低いため結婚もできないし、結婚しても子供を作れないから合計特殊出生率の足を引っ張る要因にもなっている。国会質問では、(ほんとうかどうかしらないけれど)男性の正社員の結婚率は62%だが非正規では25%という数字が述べられていた。雇用問題が今の日本社会のひずみを生んでいると言っても過言ではない。これから春闘が始まるが、正社員の給料を上げるだけではなく大企業も雇用問題と真剣に向き合ってほしい。中小企業で働いている人たちの大半は組合もないし一層深刻である。年金の目減りしている高齢者に3万円づつ配るという話も、余裕のない非正規労働者から見ればオレ達にもよこせと言いたくなるだろう。

昔は家族や地域がみんなで助け合ってカネがなくても生活ができた。今の日本は成熟社会だとよく言われるが、核家族が多い中、育児も介護も社会化社会化と叫んでカネがないと生活できない社会を作り上げて国も自治体も借金地獄。雇用問題を含めて国のあり方を見直す知恵はないだろうか?