あるべき政治の決断とは

いわゆる「イスラム国」が日本人二人を拉致し身代金を要求している事件について、期限の72時間から丸一日以上経過しているのに(政府は総力を挙げて二人を救出するための努力をしているようだが)、一向に相手の出方がわからないし二人の消息についてのニュースも入ってこない。世界中が注目している事件であり、この卑劣なテロ行為に激しい憤りを覚える。

今日この事件について田母神俊雄元空爆長の発言を読んで大いに共感した。「日本政府には、2人の人質を助けるために全力を尽くしてもらいたいが、そのためにイスラム国側に裏で金を渡すようなことがあってはならない。彼らに利益を与えることは絶対に避けるべきだ。テロとは戦わなければ、今回2人が助かったとしても新たなテロがまた起きてしまう。より多くの人が犠牲になるのである。

 昭和52年(1977年)9月28日、パリ発東京行きの日航機が日本赤軍にハイジャックされ、バングラディシュのダッカに強制着陸させられた。乗員乗客百数十名を人質に取り、日本赤軍は、身代金16億円と監獄に拘留中の日本赤軍9名の釈放を要求した。当時の福田赳夫総理は「人命は地球よりも重い」の名言(迷言?)を残し、出獄希望の6人の日本赤軍メンバーを釈放し、16億円の追い銭をくれてやった。これによって乗員乗客は無事解放された。しかし北朝鮮がこれを見ていた。本事件の1ヵ月半後の11月15日横田めぐみさんが拉致された。そして今、北朝鮮から帰国している曽我さん、蓮池さん、地村さんは、翌昭和53年に拉致された。さらにその後数百名にも及ぶ多くの日本人が行方不明となった。北朝鮮が、日本は人質を取って脅かせばカネを出すと思ったかもしれない。」と書き、同じような事件に対するドイツの措置との違いを論じている。

あのダッカのハイジャック事件については私も鮮明に覚えているし、一人の日本人として福田総理の決断を嘆かわしく思った。あの時総理の方針に抵抗し法務大臣を辞した気骨ある政治家がいたことも覚えている。のちに釈放された日本赤軍が世界のあちこちで起こした事件や北朝鮮に肉親を拉致され帰りを待ちわびているご家族のことを想うと、右するか左するか時の政治決断が如何に大事かをつくづく感じる。