一票の格差

度重なる最高裁判決によって「一票の格差」が問題になっている。「一票の格差」とは単に人口比で議論されているけどこれでいいのだろうかと私は疑問に思う。投票率を考慮すべきではないかとか、人口比ではなく有権者比で考えるべきではないかという議論、また、参議院などはアメリカの上院のように各州から2人づつ選ぶ方法(カリフォルニア州のようにでっかい州と小さな州では人口比でいうと70倍もの格差があるのに議員はどの州も2人)を参考にして東京都も鳥取県も定数を同じにしたらどうか・・・・などいろんな選挙制度が考えられる。

ながらく永田町にいた経験から言わせてもらえば、衆参とも議員を人口比だけで選挙区割りを決めるのは良くないと思う。なぜなら、都会に住む人の声はますます大きくなり地方に住む人の声が届きにくくなるからだ。ましてや地方の選挙区から出ている議員も東京生まれの東京育ちが多いのである。例えば、いまTPPが問題になっているけれど、農業関係者から票をもらっていても本当に農村の実情や地方が抱えている問題をわかっている議員は少ない。林業に至っては真剣に議論したり優先して取り上げようとする議員のなんと少ないことか。

当面は「0増5減」で糊塗するとしても、ちまちましたことを言わないで衆参両院の選挙制度や議員定数のあり方を国会以外の第三者機関で決めてもらいたい。議員がいくら議論しても自分や自分の政党に不利なことは決められないからダメだ。20年も前に中選挙区制から小選挙区制に変わった経過を見たり学んだりしてきたが、発端はリクルート事件などの反省を考慮して、カネがかかりすぎる政治から脱却しようということだった。しかし結果はどうか。政治活動を国民の税金が原資である政党助成金に頼り、地方議員と同じように選挙区の葬式や祭りに顔を出さなかったら有権者からお叱りを受け、勉強したり考えたりする時間もない小粒の議員が増えたこと、なおかつ、政党対決の選挙となり、その時の風に左右され、かならずしもいい人物が当選できるとは限らなくなったこと、死票が多いことなど選挙制度が代わって日本の政治が良くなったとは言えないのである。100点満点の選挙制度はないだろうが、早く政治の劣化に歯止めをかけてもらいたい。