五百旗頭真先生の話

防衛大学校校長、東日本大震災復興構想会議議長などを務められた五百旗頭真先生の講演を聴いた。「激動の世界と日本の安全保障」というテーマであった。

「いま日本は大きな転機を迎えているが、歴史を振り返れば、困難に直面してはそれをバネとして乗り越え飛躍を繰り返してきた。まず第一は7世紀無謀ともいえる白村江の戦いに敗れ50年後当時世界一の唐文明に学び平城京を作った。第二は13世紀の蒙古襲来、白村江の二の前はやらなかった。第三は応仁の乱から戦国時代で平和と統治の不可能を学び、そのあと270年に及ぶ平和な徳川時代を築いた。第四は1853年の黒船来航から半世紀を経て日露戦争の勝利を勝ち取り近代西洋文明の学習をした。第五は1945年敗戦の廃墟から立ち上がって1980年代世界一のモノ作り国家に進んだ。今は27位に落ち、ゆでがえる状態の日本になっている。また北朝鮮・中国から安全保障上の脅威、加えて経済やエネルギーの危機を迎えている。

ここで、日本はアジアの周辺国とうまく付き合い中国の横暴を許さないようにすること、日米同盟をより強くし防衛能力を高め中国に『へたに日本に手を出すと恥をかく』と思わせることが重要だ。

日本は少子高齢社会、人口減少時代を迎え前途に希望がないようなことを言う人がいるけれど、悲観することはない。戦国時代は人口1500万人、江戸時代は3000万人しかいなかったのに、いま12000万人もいる。少々減ったからと言ってくよくよすることはない。バランスのとれた人、器を育てることが必要で専門的な技術はその上に乗っけるだけでいい。そして、一人一人の能力だけではなく全体の気風ややる気が必要だ。その上に決断する指導者が居ればよい。

あの東日本大震災のとき、日本国内ではまだ復旧できていない、対応が遅いなどマイナス評価が多いけど、外国人は驚くほど日本を評価している。たとえば、時速270キロで仙台近くを走っていた新幹線が緊急地震速報で急ブレーキをかけ脱線を防げたことは凄いこと、略奪や暴行が全くなかったことは外国では考えられないようだ。

自衛隊のふるまいも国内外から評価された。10万人規模からなる統合任務部隊の指揮官を務めた君塚栄治氏は隊員たちに『海上保安庁、消防庁、警察庁などとともに任務をともにするが、他のどの機関よりも我々自衛隊はどんなに苦しくとも最後まで被災者を支え続けなければいけない。特に大事なのはご遺体だ。汚いとか臭いなどと言って粗末に扱わないように、自分の両親や子供だと思いなさい、そして被災された方々には心のこもった世話をしなさい。』と訓示し隊員たちは見事にそれを実践し評価された。」ざっと以上のようだが、日本人として元気が湧いてくるお話であった。