50年前の感触

私は学生時代体育会ボート部に在籍、経済学部卒というよりボート部の活動に熱中していたからボート部卒といった方がふさわしいかもしれない。最近一年先輩の石本さんから「古希を迎えて同期の者でエイトに乗るから君も来ないか。こんな経験はもう最初で最後だと思うから。」というお誘いを受けた。私は古希にはまだ1年及ばないのだが、「身体がついてゆけるかな?」と心配しながらも喜んで瀬田の艇庫に向かった。

懐かしい先輩方にお会いし、昔の我々の現役時代には想像できなかった可愛らしい女子マネ三人がかいがいしく準備してくれた。舟は昔の木製と違ってみんなグラスファイバー製、オールの形も違う。一年生の現役選手が艇庫から舟を運びオールまで付けてくれた。現役の選手にコックスをお願いしドキドキしながらエイトに乗った。まわりの瀬田川の風景は昔とあまり変わりはない、想えば学生時代毎日練習に明け暮れた日々がついこの間のことのように蘇ってくる。私は4番を漕ぐように言われた。コックスの指示に従ってオールを握り水をキャッチ・ロー、何度も繰り返していると汗が噴いてきたが、オールを通して伝わる水の感触が50年前を想いだしたように手のひらに伝わってくる。たった40分くらいの体験であったが、何とも言えない喜びであった。舟から降りてしばし雑談、昔の思い出話に花が咲いた。誘ってくださった石本さん、世話をしてくれた後輩の高橋君、現役の皆さんに心から感謝のひとときであった。「75歳になってもう一度やれるかな?」という声が出たが、誰からも自信ありげな答えはなかったけれど5年後参加出来たらいいなと思う。

艇庫を背にして記念撮影(筆者は向かって右から二人目)
学生時代にもう一度戻りたい
これでマスターズのレースに出たら?