政治が国民から信頼される社会に

久しくお会いしていなかった武村正義元官房長官のお話を聞くことができた。滋賀県出身で自治官僚から知事や衆議院議員を長く続けられ新党さきがけ代表、財務大臣、内閣官房長官など要職を歴任された政治家だ。引退され今77歳だという。
 「世界も日本も展望のない時代を迎えている。人間は数百万年前地球上に現れ膨張を続け70億人を超えた。地球環境最大の破壊者として繁殖し続けていることが許されるのか?日本をはじめ先進国は押しなべて財政破たんの状態、10番目の核保有国イランをよってたかってたたいているが国連常任理事国の5つの大国をはじめ9つの核保有国の責任を問われないのはなぜか?この地球社会を人間がコントロール出来ない状態になり民主主義も行き詰っている。
 日本の政治に3つの問題意識を持っている。①この国のもっともすぐれた人が政治家として登場する仕組みになっていない。イギリスでは政党が一週間かけてあらゆる角度から選挙に出て良い人かどうかを審査している。日本は健全な市民が被選挙権を得られず変わり者の中から選んでいるのが実態だ。どうすればこれを変えられるか?政治家の報酬が高すぎるのもいけない。地方議員はボランティアにすればいい。②いまの政治は次の総選挙が何時あるかなどせいぜい数年先しか見ていない。せめて10年先を見通して行動する仕組みができないものか。自民と民主が入れ替わるだけでは何も変わらない。③今の衆議院の小選挙区比例代表並立制という選挙制度が日本の政治風土に合わないのではないか。中選挙区3人制にして2人連記できるようにすれば同士討ちの弊害も回避できる。
 野田内閣の消費税増税について、野党は、『マニュフェストを作ったときは消費税増税を考えていなかった』ということを政府与党に認めさせたうえで協議に入るべきだ。議論もせず解散・総選挙だというのではダメだ。野田内閣がどうしても増税をやりたいなら大胆な妥協をして、政治改革や行政改革について自民・民主・公明が合意して6月の話し合い解散としたらどうか。」
 ざっと以上のようなお話だったが、特に強調しておられたのが、どうすれば政治に対する国民の信頼を得られるのかということであった。政治改革に情熱を燃やしておられた若き武村先生の姿がよみがえってきた。
 かつて私も初めて選挙に出るとき、パンフレットに「政治家が尊敬される社会を!」と書いて「君は有権者に自分を尊敬しろと言っているのと同じではないか、これじゃダメだよ」と言って奥野誠亮先生に叱られ、作り直したことを思い出した。私の気持ちは(青臭いかもしれないが)、武村先生と同じく政治家をさげすんでみるような社会から抜け出さないと日本は良くならないと真剣に考えていたのだ。