TPP参加問題ー開国に立ち向かえない政治家の体たらく

まさに国論を二分している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について野田首相は参加の決断をためらっている。(11月11日現在)

私は以前小泉首相が総裁選挙や国会で「誰がなんと言おうと8月15日堂々と靖国神社に参拝します」となんども声を張り上げていたのに結局中国の圧力に屈して8月13日そそくさと参拝、多くの国民をガッカリさせたときのことを思い出した。問題の性格は全く違うけれど、国のあり方や将来への方向を決める大事な決断をしなければならないとき、国家の指導者がためらいを見せたり決断しないのは、器(うつわ)が小さいことを天下にさらしているようなものだ。

TPP問題は、貿易立国日本が世界のなかでどう生きてゆくかという方向を示す決断を突きつけている。個々の中身を見るとメリットもあればデメリットもある、農業や対米関係だけの問題でもない、黒船来航のときと同じように、日本が「開国」を迫られているのだ。EUは域内でのモノと人の往来を自由にしているし隣の韓国はEUやアメリカとFTAを結んでいる。世界は貿易の自由化に向けてうねりを起こしているのだ。大きな視野に立って日本国の将来を展望しTPP問題をみれば、参加への決断をするのは当然のことだ。与党民主党の経済連携プロジェクトチームが参加の方向性を打ち出せないというのも情けないが、自民党をはじめ野党も一緒になって野田総理の決断に「待った」をかけている姿もいただけない。農業団体を中心とする選挙のときの票を意識して石原慎太郎氏のいう「我欲」にとらわれているからにほかならない。

私は農林業の将来を誰よりも心配している一人だと自負しているが、いまのような国の農業政策や農協を初めとする農業団体の姿勢を見ているとますます日本の農業がダメになってゆくのは必定だ。TPP協定の中にあるように10年かけて日本農業の大改革をやればきっと農業にも希望が見えてくると信じている。そのためには、農水省と農協の護送船団体制を根本から見直すこと、コメだけではない、農産物すべてについて輸出を含めた販売体制の見直しをすべきだ。これまでの農業は、開国を恐れ「守る」ことに汲々としてきたが、「攻める」ことをもっと真剣に考えれば先は明るくなる。安全な農産物を提供できること、高い農業技術を持っていることなどを考えると日本の農業は充分世界の競争に勝てる。

「慎重に」とか「反対」とか鉢巻して叫んでいるだけでは、展望は開けないし無責任な発言をしている政治家も辞めてもらいたい。野田総理は腹を決めてTPP交渉参加への意思表示を示して欲しい。

とはいえアメリカは、容赦なくいろいろなクセ玉を投げてくるだろうが、日本も負けないでしたたかな外交交渉をしてもらいたい。農業だけではない。金融、医療、規制緩和などいろいろな分野で日本の国益に照らしながら世界で羽ばたいてゆける国づくりを目指して欲しい。