男に生まれてよかったか?

 

l         NHKの朝ドラが「おひさま」から「カーネーション」に変わった。服飾デザイナーの草分けともいえる小篠綾子さんがモデルだというが、主人公の小原糸子は子供の頃から男尊女卑の環境のなかで歯を食いしばりながら男顔負けの人生を歩んでゆく姿が痛快である。

l         もう一つ最近見ているテレビ番組で「神様の女房」という経営の神様と謳われた松下幸之助翁の奥さん松下むめのさんを描いた3回シリーズが実に面白い。原作者は松下氏の元執事高橋誠之助さん、この方の本も読んでいたからよけいに面白い。丁稚から身を起こし、借家住まいで財産のひとかけらもない状態から一代で松下電器産業を世界的企業に育て上げた松下幸之助翁成功の陰に奥さんの大きな存在があったればこそというのがよくわかる。

l         先日、家内に誘われて坂東玉三郎の舞踊を観にいくことになった。客席は一階から三階まで満席、見渡すと熟女ばかり、私のような男は数えるほどしかいなかった。玉三郎は、吉原のおいらん、藤娘、楊貴妃とどの役をやっても身のこなし、しぐさが妖艶で気品もありどの場面をみても絵になる“女”であった。60歳近い男がこんな魅力的な女を演じることができるとは凄いなあと思って観ていたが、玉三郎がほんとの女だったら客席は男のほうが多いだろうなとも思った。

l         小篠綾子、松下むめのは女だからこそあのような人生を送れたのだと思うし、玉三郎は男だからこそあれほどの女を演じることが出来たのではないだろうか。人は性を選んで生まれることは出来ない。最近私は男に生まれてよかったのだろうか?女に生まれていたらどんな人生を送っていただろうか?と思うことがある。

l         年間3万人を超える自殺者の6割まで中年以上の男だ。また、一般的に女のほうが長生きするし、連れ合いに死なれても男はなかなか立ち直れないが、女はしばらくすると再び輝くという。戦死する人も最後は「お母さん!」と言って死んでゆくが「お父さん!」と言って死んでゆく人はいないそうだ。男は淋しいものだ。

    でも、家内は若い頃「日本の男は仕事だ、仕事だと言ってなかなか帰ってこない。女は子育てや家事を一人でやらなければならない、損だ」とよく言っていた。 男と女、どちらが得なのかはわからないけど、40年以上の結婚生活を経て夫婦とは歳を取ったほうが良いものだと最近つくづく思う。「貴方!これお願い、あれお願い」と指示が飛んでくるけれど、これでよいのだ。「支えあいと思いやり」これが男と女だ。