文化を食べる・・・和菓子の世界

 京都に出て、 ひょんなことから有名な和菓子屋さん「末富」の社長山口富蔵氏のお話を聞く機会に恵まれた。上等の和菓子なんて私にとっては全く別世界だったが、実に興味深いお話であった。

 「京菓子というのは貴族文化すなわち公家文化そのものでした。なぜなら、和菓子を買う人は茶道をたしなむお公家さんやったから。江戸の末期、京都は東西2,5キロ、南北6キロの実に狭い街でしたがそのなかに248軒もの菓子屋がありました。和菓子は季節の表現を大事にします。四季の移ろう世界を古典や万葉集などから引いて名前をつけたり色・形を表現します。花びら餅はお正月、ちまきは5月、水無月は6月30日、着せ錦は9月9日、亥の子餅は10月などみんな食べる時期も決まっているし理由があるのです。水無月は葛を使って三角にして氷を表現、6月30日は一年の折り返し点で無病息災を願って食べるのです。今のスイーツは可愛いと甘くないがキーワードですが、和菓子は違います。日本の文化、文化を食べるのです。季節感を言葉だけで肌で感じられない世の中になっていますが、忘れていたものを和菓子を食べることによって、もう一度思い出して欲しいです。

 人間は自然をコントロールできるという思いあがった気持ちを持つと東日本大震災のようなことになります。豊かな暮らしというのは、テレビもラジオも消して家族一緒にお互い顔をみながら食事が出来る状態だと思います。現実は家族バラバラ、食事の時間も違う家庭が多いです。IT社会になって幸せかというとそうではない、人間社会というのはもっと複雑で温かいものではないでしょうか。」

 ざっと以上のようなお話だった。このあと美味しい水無月がふるまわれ、お話の中身をかみ締めながらいただくことが出来た。山口社長さんに「奈良から来ました」と言って挨拶すると唐招提寺や薬師寺の名前を出され、饅頭祭りの林神社のこともご存知で嬉しくなった。

 素晴らしい文化を持つ日本はいい国だとつくづく思いながらも、テレビを付けたまま食事している我が家を振り返りチョッピリ反省!