日本農業の将来

 「 奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム」の農林業と食料分科会に始めて出席させていただいた。座長は奈良県OBの木村衛さん、アドバイザー西村元男さん、事例報告と政策提案は「集落営農」寺田清男氏(大畑営農組合元組合長)・「野菜」東口義巳氏(有限会社とぐちファーム取締役社長)・「果樹」太津隆司氏(県果樹研究会元会長)・「花き」松井正昭氏(農事組合法人五條園芸代表理事)という布陣でお話を聴かせてもらった。井上さんと言う方から畜産の話もあったが、それぞれ苦労しながら農業と取り組んでおられる様子がよくわかった。だけど皆さん成功しておられる方々ばかりであり、近畿で一番耕作放棄率の高い奈良県の農業をどうするかという視点でもう少し掘り下げた議論が欲しかった。

 そこでわたしは、「(政治の世界で働いてきたから自戒を込めていうが)戦後日本の農政で減反政策を40年以上も続けてきたことが誤りでこれが農業者の意欲を失わせてきたから儲からない、後継者がいない農業になってしまった。そのうえ、現政権のように農家の戸別所得補償政策をとるとサラリーマン収入のほうが多い人達に小遣い銭を差し上げるようなもので、農業の振興に寄与することのない無駄金になってしまう。そして、TPP参加について今の農協のように農業が壊滅すると言ってただ反対するだけではダメだ。貿易の自由化の流れに抗するだけでは世界から取り残される。FTAなりTPPなり自由化を受け入れるための体質改善をやるべきときがきている。そのためには農協も2つ3つ作って競争、切磋琢磨するくらいの覚悟が必要ではないか」と申し上げた。

 議員秘書のときから、日本の農業というとコメの価格ばかりが関心事で減反を続けしかも内向き、農産物を輸出するなんてほとんど考えない政策に終始していたことに疑問を抱いてきた。農業は儲からないものと決め付けているが、土地集約型の分野は厳しいだろうが工夫すれば日本農業の生きる道は充分展望できると思う。植物工場では一年に14回から18回もほうれん草を出荷する話も聴いている。コメだって日本のコシヒカリは1キロ千円以上でも買う国があるという。またコメは炊飯して食べるものだという日本文化を輸出すれば販路は広がるだろう。オランダやデンマークのような農地の少ない国だって農業でりっぱな国づくりをしているではないか。税金の使い方も意識を変え欧米や韓国を見習って農業構造改善に振り向けるべきだ。奈良県はどちらかと言うと消費県だから陳情もいつも控えめだったが、大阪・京都に近い利点を生かして農業を元気にする道を真剣に考えるときだ。

 勉強会の最後に木村座長が「貿易自由化に向うことは前提としながらも農業には限界があることも事実だ」と上手に締められたが、報告者の中からも「農協はTPP反対を掲げながら本音は条件闘争に持ち込みたいと思っている」という話もあった。農業者の方ばかり見るのではなく、安くて安全な食料確保を願っている消費者の目も意識しなければいけないし、ウカウカしていると隣の韓国にやられてしまうことを国民みんなが考えないとダメだと思う。