農業の将来は明るい

 まだ日裏には雪が残っているというのに我が家の庭にいくつもフキノトウが頭をもたげている。あんなに冷たい風にさらされながらも元気に土を押し上げてきた姿に愛おしささえ感じる。「春は名のみの風の寒さや・・・・」という早春賦の歌詞を思い出すが、ここ数日少し暖かくなってきたからありがたい。

 我がNPO法人はいくつかの課題を抱えているが、その一つ「耕作放棄地を蘇らせるために蕎麦を作る」第一歩が動き出した。快く貸していただける畑が幾つも出てきて県庁の担当者や農業振興公社の人にも現地を見てもらった。3月には草刈や耕運機で土を起こす作業に入る。思い起こせば30年以上も前、父親たち世代の人達が農業に夢を描きながら国営総合農地開発事業に賛同し圃場整備を行った土地である。農水省直轄の事業だけに田畑が綺麗に整備され当時は見違えるような風景になって喜んでいたが、最近は村の若い人達もほとんどサラリーマンになって荒れた畑が目立つようになっている。農業では食っていけないから遣り甲斐がない、イノシシなどの獣害によって作物が食いあらされ耕作意欲がなくなったことなどによるものだろうが、もったいないことだ。税金のお金をいっぱいつぎ込んだにもかかわらず、それが活かされていない。田んぼは40年以上にわたる減反政策によってむりやり休耕田になっているところもあるし、畑は耕作放棄地となって無残な姿をさらしている。我が家の茶畑も草ぼうぼうの状態だ。

 いまわたしは、「日本は世界5位の農業大国ー大嘘だらけの食糧自給率」(浅川芳裕著)と言う本を読んでいるが、農水省発表のカロリーベースの食糧自給率は実態を反映していない、生産額ベースで見ると先進国中、日本は米国、フランスに次いで第3位の自給率を誇っていると書いている。また、「農業は成長産業」だというのは世界の常識とも書いてあり、工業製品などがどんどん安くなっていくなか農産物の需要が膨らみ貿易額も増えている実態を説いている。さらに、「こんなに強い日本農業」の項を読むと目からウロコである。この本を読むとこれまでの日本の農業政策の誤りが透けて見えるし、民主党の戸別所得補償政策は「黒字を目指す当たり前の事業のあり方を否定し、むしろ赤字を奨励しているのだ。いまだかつて、これほど人間の努力とリターンに逆進性のある制度は存在しなかったのではないか。」とたたいている。

 いずれにしても、私もこれから農業が脚光を浴びる時代に入ってゆくと思うし、賛同してくださる同士とともに荒れた畑を蘇らせることによってささやかな地域貢献をしてゆく覚悟だ。