映画「太平洋の奇跡ーフォックスと呼ばれた男」を観て

 「太平洋の奇跡ーフォックスと呼ばれた男」という映画を観た。アメリカとの戦争中激戦地の一つであったサイパン島で、たった47人の兵力で4万5千人もの米軍を翻弄した実在の人物、大場栄大尉を描いた作品である。米軍は大場大尉のことを畏敬の念を込めて「フォックス」と呼んでいたという。

 映画は物量豊富な米軍に対して貧弱な装備で壮絶な戦いを繰り広げる日本兵や貧しい生活をしている日本の民間人を描くと同時に、大場大尉の指揮官としての苦悩や的確な判断力、指導力を表現していた。サイパン島守備隊である第43師団が玉砕した後も大場隊はタッポーチョ山を拠点にゲリラ化し日本軍の降伏後も遊撃戦を展開、米軍の説得工作にも「上官の命令がない限り闘う」姿勢をくずさなかった。しかし、ついに1945年11月27日、天羽馬八陸軍少将の正式の降伏命令を受け投降することとなった。同年12月1日大場隊47名は戦死者に対し3発の弔銃を捧げ慰霊をした上で軍装を整え日章旗を掲げ隊列を組んで軍歌を歌いながら行進・下山し投降する姿に惚れ惚れするような日本人らしさを感じた。投降式典において大場大尉は投降の証として自身の日本刀を抜いてアメリカ軍に渡す、さぞや悔しかったろうと思うと、涙が溢れて止まらなかった。

 私は戦争を美化する気持ちなどさらさらないが、日本を守る、日本人を守るためにこんなに苦労して戦った先輩たちが居たことに、今に生きるわれわれは感謝し、子供たちに教えていかなければならないと思う。アメリカと戦争したことさえ知らない子供がいるというのは大人が悪い。調べると、大場大尉は復員後会社の社長や愛知県蒲郡市の市議会議員を務め平成4年に亡くなっておられる。