今の入札制度は「安物買いの銭失い」

 電気工事業を営む方にお会いしたら、昨今の役所の入札事情を憂えておられた。「談合がいけないということで自由競争させ奈良県では最低制限価格を公表する。すると仕事が欲しい業者はみんな見積もりもしないでその最低制限価格の値段を入れる。そして同価格の業者ばかりでクジを引いて落札業者が決まる。奈良市の場合は、最低制限価格を示しまだそこから数パーセント下げたところに当てないと落札できない仕組みになっている。」という。「設計金額より何割か安い値札を入れないと仕事が取れないばかりか、値段さえ安ければどの業者でも良いというやり方だからどの仕事も儲けがない、厳しい予算でやりくりするから働く人達の給料も安くなるし仕事も粗雑にならざるをえない。こんな悪循環を繰り返してて良いのか?役人が故意に特定の業者に取らせようとする官製談合はいけないけれど昔のように業者同士が秩序良く順番に仕事にありつけるやり方のほうが良かったと思う。」とため息をつかれた。

 その話を聞いて、私も共感するところが多かった。昔建設業界でサラリーマン生活を送ったことがあるから彼の思いが良くわかる。談合というと実に聞こえが悪いし、政治家で談合を容認するような発言をしようものならマスコミにこっぴどく叩かれてしまう。役所は談合があったと騒がれないようにするため、手を変え品を変え談合防止の網を張っているがこれでいいのだろうか?業界で働く人達の生活はますます悪くなり、工事の質も低下する、でも役所は談合がなかったからなにも落ち度はないと平気な顔をしている。奈良県の工事で最初は安い値段で落札しておき設計変更の理屈をつけて追加工事で多額の金額をせしめたケースがあったそうだが、全て税金だから県民は結局「安物買いの銭失い」で損をこうむっているのではないだろうか。

 入札制度が大きく変わったのはアメリカからの要求からだったと承知している。なにもアメリカの要求を鵜呑みにする必要がないし、日本には日本のやり方があるんだといえる改革にすべきだった。建設業界の人達も足の引っ張り合いをしないで団結し、発注者である役所と話し合って、より良い入札制度に改めないと結局損をするのは納税者だ。マスコミの皆さんも談合だといって鬼の首を取ったように騒ぐのを止めてより良い入札制度を提案するような姿勢を示したらどうか。