辛卯の新年を迎えて

2011-01-05 13-05-37_0001_サイズ変更 寒波襲来で波乱の年明け、正月三ヶ日は家族と団欒の平和な日々を過ごすことができたが例年以上に寒かった。4日は家内と大阪に出て久しぶりに映画を観た。「武士の家計簿」という江戸末期加賀藩の会計係を代々務めている(実在した)一家を描いたもので、家内が昨年暮れに観たが「いい映画だから貴方も観たほうがいいわよ」と言っていたので観ることになった。従って家内は二度目だけど「もう一度観たいから」と付いてきた。

 言われたとおり、教訓的ないい映画であった。「自らは正義感が強く不正を許さない、借金を返すために出るを抑え入るを図る生活を課し質素倹約を貫く、算盤一つで代々身を立ててきた一家らしく子供の教育も徹底して自立心を育む厳しい父親像」そんな人物を描いていた。家の借金を返すために体面や体裁を捨て家族の大事なものまで全て売り払うそして耐えるそのような主人公の生き様を見て今の日本の国家財政が頭をよぎった。900兆円もの借金を抱えているのに税収以上の国債発行を今年も認めようとしてこれから予算審議が始まる。今年は地方選挙があるからこれ以上抑制できないといって92兆円以上の予算を組み、子供手当てだ、農家の戸別所得保障だとカネをばらまく。労働組合に支えられた政権は公務員の給与カットも実行できない。国民もこのままじゃダメだと知りながらも税金を上げるというと拒否反応を示す人が多い。社会保障を充実させろと政治家を突き上げ、選挙が近くなると政治家も甘い言葉ばかり並べ立てて有権者を惑わせる。それが政治不信に拍車をかける。もう何十年もこの悪循環が繰り返されてきた。国民に向って「非常事態です。私や我が党がどうなってもかまわない。国家の浮沈に関わるときだけに、国挙げて財政再建に取り組みたいから協力してください。国会議員の歳費は5割カット議員定数も半分にします。公務員の皆さんも2割の給与カットに協力をお願いします。また社会保障もほんとうに困っている人達に集中して税金を使い自分で出来ることは自分でやってください。借金を返しムダをなくすまで国民皆が苦しみを分かち合おうではありませんか。与党野党関係なくみんな協力してくれませんか」このような総理が現れて国民に向って訴えるとどうなるでしょうか?小泉元総理はこういうタイプの総理だったが、アメリカのお先棒を担いで対象を郵政だけに置いたから余計な問題をいまだに引きずる結果になった。しっかりした国家觀を持った指導力のある総理が出て欲しい。また国民も「子育ても介護も社会化が当然、収入以上の国債発行もいいじゃないかという甘え」を許さないと言って立ち上がるべきときだ。

 この映画は子供の教育についても考えさせられた。五歳の子供に出納帳を付けさせ4文失ったというと雨の中を徹底して探させ、よそで拾ってくると夜1人で川辺に返しに行かせる主人公、わたしはとても我が子にこんな厳しい躾はできないなと思った。

 今日5日は、我が事務所の初仕事、1月22日の催しの打ち合わせなどをしてから経済団体の新年互例会に出席、いろいろな方々にご挨拶できた。近畿経済産業局長の挨拶の中に「農業を重要産業と位置づける」「日本文化を支援してゆく、ファッション、文化、観光など伸びる余地がまだまだある」そんな言葉があった。いいことをおっしゃっているのだが、特に農業についてTPP参加を前提に話しているのは明らか、今頃になって農業は重要産業だなんて遅すぎる。またもや、アメリカのお先棒を担ぐようなやり方をしないでもらいたいというのが率直な気持ちだ。

 民主党を応援しておられる方々ではないかと思われる人達から「森岡さんのブログはえらい辛口でんな。」と言われたり、他の人からは「おもろいでっせ、持って行き所の無いいまの政治に対する不満を森岡さんが書いてくれてるからスーッとしまっさ。」との声、結構読んでくれてはるんや。

 もうひとつ、昨年から白くて坊主頭に近い短くカットしている私の頭をみて「誰かと思うがな」「えらい歳とったな」と言う人もあれば「若返ったな、ええなあ」とひやかす人あり「どこの刑務所から出所してきたんや」という人まであっておもしろかった。

 午後は興福寺の多川貫主・守谷執事長、東大寺の北河原管長・狭川執事長らにご挨拶、春日大社では権宮司さん等にお会いし、ひとり正式参拝をさせていただいた。大晦日の雪のため例年に比べどこも参拝客が少なかったとのこと。それぞれお参りし日本を代表する寺社仏閣だけにやはり奈良はいいなと思う。多川貫主は中金堂建設に懸命で苦労しておられるご様子、そして博識な方故いろいろ面白いお話をきくことができた。東大寺の狭川普門執事長は暮れにヴェトナムにいかれたそうで、ヴェトナムの人から「日本では3万8千人も毎年自殺するそうですね。また、日本では親の子殺し、子の親殺しが多いですね。ヴェトたナムにはそんな人はおりませんよ」と言われたという。「儒教の影響や親孝行の道徳がしっかりしているし中国にも警戒しながら付き合っている、あの国はまだまだ伸びますね」と興味深い今のヴェトナム事情をお聴きすることができて良かった。