保護司の限界

 保護観察官との懇談の機会があった。対象者と面接するとき裏切られたこと、なかなか思うようにいかない苦労話などわれわれ保護司との間でやりとりがあった。ある一定の成果や前進がみられたらそこで打ち切るとか時には突き放すことも大事だという話もあった。だけど私には保護司としての限界や空しさを感じることがあることを申し上げた。「対象者ばかり見て指導していても家庭を中心とする環境を変える手助けをしなかったらなかなか這い上がることができないのではないか。両親がこどもに愛情を注げない状態ではいくら本人を説得してもまたもとの木阿弥ではないか」と。観察官は無難に答えておられたがわたしには充分納得がいくものではなかった。

 保護対象者として5年間も付き合ってきたA氏、嫁さんに逃げられ娘にも会えない、親戚とも絶縁状態のひとりぼっち、保護観察期間は終わっているがどうしているかなと気にかかる、情が移るものだ。果たしてほおっておいて彼は幸せに暮らしていけるのだろうかと思ったりするのは余計なおせっかいというものだろうか?