藤原正彦先生の「教養立国日本」

文芸春秋で藤原正彦先生は「教養立国ニッポン」と題して次のように述べておられる。「ここ10年の構造改革は、もはや改革とはいえない。とりわけ小泉政権以降の7年間を一言で評すると、よくぞこれほど祖国日本の国柄をこわしてくれた、である。世界一の基礎学力を持った日本国民がなぜ、かくも無邪気に伝統や国柄を木っ端微塵に打ち砕く構造改革を支持したのだろうか。その理由は2つ、第一は経済至上主義であり、第二は日本人が祖国に対する誇りを失ったことである。この二つは戦後60年の澱(オリ)であるから簡単に除去することは難しいであろう。教養主義の復活が妙手と考える。

教養がなぜ人間にとって、経済と並立するほど大切なのか。第一は大局観、第二は教養が人間的魅力を高める。第三に教養は日本の国柄でもある。第四に教養は愉しみでもある。第五に教養は誇りだ。経済は豊かな社会を実現するためであり、教養は自らを豊かにするためのものである。強くたおやかな祖国を取り戻すため、教養主義の復活が切望される。」と。

藤原先生の言葉は実に説得力があり、自らの生き方を考えさせてくれる。感動の論文であった。